せどりを始めるにあたって、開業届が必要かどうか、よくわからない方も多いでしょう。
結論から言えば、開業届は必ずしも必要ではないですが、税務署に提出した方がいいです。
開業届の手続きはそこまで面倒ではないですし、確定申告でもメリットが大きいからです。
そこで、今回はせどりを開始するなら開業届を出した方がいい理由と、提出するタイミング、書き方などを解説します。
これからせどりを始める方で、開業届をまだ出していない方は最後までご覧ください。
目次
せどりを始めるなら開業届は必須ではないが提出した方がいい3つの理由
冒頭でお伝えしたとおり、せどりを始めるなら開業届は必須ではないですし、慌てて提出する必要もありません。
ただ、開業届は出した方が確定申告でメリットが大きいですし、逆にデメリットがほとんどありません。
特に本格的にせどりに取り組み、稼いでいきたい方は、開業届を出した方がいいでしょう。
青色申告が可能になり節税上のメリットが大きい
開業届を出そうが、出さなかろうが、会社の給与以外で年間の所得20万円以上であれば、確定申告を行わなければいけません。
開業届を出さなければ白色申告しかできませんが、開業届と青色申告承認申請書を提出すれば、青色申告が可能になります。
白色申告 | 非推奨 | 経理作業が青色申告よりシンプルだが、節税上のメリットが少ない。2014年以降、白色申告でも記帳する必要があるので、白色申告を選ぶメリットはほとんどない。 |
青色申告 | 推奨 | 経理作業が白色申告より面倒な代わりに、節税上のメリットが大きい。会計ソフトを使えば記帳は簡単にできるので青色申告の方がおすすめ。 |
具体的には、青色申告をすることで次のような節税上のメリットがあります。
青色申告特別控除 |
|
赤字の繰り越し | 所得が赤字の場合は3年間繰り越すことができ、翌年以降の確定申告で所得金額から控除できる。 |
損益通算 | 給与所得、不動産所得など複数の所得があれば損益通算ができるので、いずれか赤字の場合に節税効果が高い。 |
事業専従者給与 | 家族の給与を経費にできる |
減価償却の特例 | 30万円未満の少額減価償却資産を一括経費計上できる |
上記については、白色申告では適用されません。
所得が少なければ、白色申告と青色申告で、税金に大きな差はありませんが、所得が増えると大きくなります。
また、青色申告の場合は、赤字を3年間繰り越したり、他の所得と損益通算ができたりするので、低所得、もしくは赤字でも青色申告の方がおすすめです。
問題は、55~65万円の青色申告特別控除が適用されるには、記帳が複雑な複式簿記を選ぶ必要があることでしょう。
しかし、会計ソフトを使ったり、税理士や経理代行業者を利用したりすればほとんど問題ないので、あまりデメリットにはなりません。
開業届の提出の有無に関わらず、確定申告と納税は必要なので、節税効果の高い方を選びましょう。
なお、確定申告についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
開業届を出しても副業がバレることはない
副業がバレることが嫌で、開業届を出すことに躊躇する方がいますが、心配しなくても大丈夫です。
税務署に勤務先の会社を知らせるわけではないですし、税務署が勤務先の会社に「この人、開業届を出しているよ」と通知することもありません。
会社の業務中に副業したり、同僚に副業のことを話したりしない限り、バレることはほとんどないのでご安心ください。
開業届を出すだけなら誰でも簡単に無料でできる
開業届の手続きは、非常に簡単です。
税務署に行って、開業届と青色申告承認申請書を提出すれば終わりです。
所要時間は10分程度でしょう。
用意するのはマイナンバーカード(開業届に個人番号の入力欄がある)くらいで、特別用意しなければいけないものもありません。
そのため、せどりを始めると決めたのであれば、早めに税務署に行って開業届を提出した方がいいでしょう。
開業届の提出タイミング|「せどりを始める」と決めた日に提出すればOK
開業届の提出タイミングは、基本的には「せどりを始める」と決めた日に提出すれば問題ありません。
開業届の提出タイミングの目安は、開業してから1ヶ月以内です。
事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください。
なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
※国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」より抜粋
上記の「事業の開始等の事実があった日」というのは、せどりで言えば次のいずれかに当てはまれば問題ありません。
- せどりを始めた日(初めて仕入れを開始した日など)
- 継続的にせどりを事業としてやっていこうと決めた日
何をもって開業とするかは人それぞれで、柔軟に決めることができるので、開業後1ヶ月以内というのは目安程度に考えておくといいでしょう。
ただ、開業届を出すデメリットはほとんどないので、早めに提出しておくことをおすすめします。
開業届の書き方|わかりにくい点に絞って解説
開業届の様式は上図の通りで、基本的に赤枠の箇所を記載して提出すれば大丈夫です。
開業届の様式については、国税庁公式サイトよりダウンロードができます。
インターネット上で、様式に直接入力できるので、上記記入例を参考に記載して、開業届に提出してください。
本記事では、記載に迷いやすい次の点に絞って解説します。
- 納税地の住所
- 職業欄
- 屋号
- 開業日
- 青色申告承認申請書の有無
- 消費税課税事業者の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払い状況
なお、不明点があれば、直接税務署に行って、確認しながら記載しても大丈夫です。税務署員の方が丁寧に教えてくれます。
納税地の住所は自宅住所でOK
納税地の住所は、特に事務所を設けているわけではなければ、自宅住所で構いません。
ほとんどの方は、自宅兼事務所となるでしょう。
せどりなら職業欄は「小売販売業」「小売店主・店長」など
「職業」の欄ですが、せどり転売の場合は「小売販売業」とか「小売店主・店長」になります。
または「自営業」、「代表」でも良いでしょう。
屋号はあれば記入する。なければ空欄でOK
屋号とは、お店の名前のことです。
屋号をすでに考えているのであれば、入力しましょう。
まだ屋号がなければ、空欄のままで提出可能です。
開業日は「せどりを始めた日」または「せどりを開始しようと決めた日」
先ほどお伝えしたように、開業日は「せどりを始めた日」または「せどりを開始しようと決めた日」を記入します。
何をもって開業とするかは自分で決めて、開業届の提出日の1ヶ月前~当日に該当する日付を入力すれば問題ありません。
どうしても日付に迷う場合は、開業届を提出する日を記載しても大丈夫です。
青色申告承認申請書は、開業届と同時に出そう
上記の記載項目で、「青色申告承認申請書」の欄は、青色申告をする際に「有」にチェックを入れます。
「青色申告承認申請書」を同時に申請する場合は、開業日より2ヶ月以内に提出しなければならず、期限を守れなければ、その年は青色申告ができなくなります。
税務署に相談すれば、開業届も青色申告承認申請書も一緒に用意してもらえるので、できれば、開業届と同時に手続きを済ましておきましょう。
なお、青色申告承認申請書についても国税庁のサイトからダウンロードできます。
開業時は消費税課税事業者には「無」をチェック
消費税に関する「課税事業者選択届出書」は、「無」にチェックを入れます。
せどりを始めたばかりの方が課税事業者になることはありませんし、せどりの場合はインボイス適格請求書発行事業者に登録するメリットがほとんどないので、気にしなくて大丈夫です。
ただし、年商が1,000万円以上になると、翌年からインボイス登録の有無にかかわらず消費税課税事業者になります(法人化した場合は2年間消費税が免除される)。
せどりで年商1,000万円で利益率が20%であれば、年収200万円程度です。本格的にせどりを始めるなら、割とすぐに到達する額です。
年商1,000万円以上になった場合は税務署から通知が来るので、適切に消費税を支払いましょう。
「事業の概要」は「インターネットを使った、一般消費者向けの販売」など簡潔に記載する
「事業の概要」は、せどり転売の具体的な事業内容を書いてください。
例えば「インターネットを使った、一般消費者向けの販売」などで良いでしょう。
悩まず、簡潔に記載しましょう。
「給与等の支払い状況」は従業員がいなければ未記入でOK
「給与等の支払い状況」の欄は、従業員などがいる場合に記載する必要がある欄です。
従業員がいない場合は、空欄で大丈夫です。
また、商品リサーチや発送作業などを外注しているような場合であっても、空欄で問題ありません。
開業届を提出する際の2つの注意点
開業届を提出して、せどりに取り組む場合は、次の2点には注意しましょう。
- 失業保険が受けられない可能性がある
- 社会保険の扶養から外れる可能性がある
ただ、いずれの場合も、あくまで開業届を提出して、「せどりで稼ぐことができれば恩恵が受けられない」という話なので、あまり気にしなくていいでしょう。
失業保険が受けられなくなる可能性がある
開業届を出して、せどりに本格的に取り組んでいる場合は、会社の退職時に失業保険が受けられない可能性があります。
開業届を提出した時点で個人事業主となるわけで、副収入を得ている状態であれば失業状態にはないためです。
失業保険は失業者に対する保険ですので、退職直後から個人事業主として収入があれば支給の対象外となってしまうのです。
しかし、開業届を出していても、実質的に収入がない場合は失業保険がもらえます。
- せどりに取り組んだが、会社を退職した時点で所得がゼロ
- せどりに取り組んだが、途中で挫折したところで会社を退職した
また、ケースによっては再就職手当というものが支給可能な場合もあるので、最寄りのハローワークで確認すると良いでしょう。
社会保険の扶養から外れてしまう可能性がある
主婦の方がせどりを行う場合で注意したいことは、社会保険の扶養から外れる可能性があることです。
年収が130万円未満の場合、基本的には社会保険の扶養に入ることができます(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)。
つまり、年収が130万円以上となると、扶養から外れることになってしまうので注意が必要です。いわゆる年収130万円の壁です。
また、年収が130万円未満であっても開業届を提出すると扶養から外れることがあります。
これは、会社の健康保険が「開業者は扶養者とは見なさない」と規定している場合があるからです。
このような規定がある場合は、保険料が自己負担となり、国民健康保険、国民年金に加入しないといけないので注意が必要です。
【Q&A】開業届でよくある5つの質問
開業届の提出に関して、よくある質問について回答します。
他にも個別で不明点がある場合は、最寄りの税務署に確認するといいでしょう。
Q.開業届を出したから必ず確定申告はしないといけませんか?
A.開業届を出していても、年間所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。
ただし、赤字の場合は3年間繰り越しができますし、給与所得等と損益通算ができるので、確定申告をしておくことをおすすめします。
Q.1つの開業届で複数の事業を行って大丈夫ですか?
A.1つの開業届で複数の事業を行うことは問題ありません。
例えば、せどりとアフィリエイトで副業を行う場合、各々で開業届を出す必要はありません。
まだ開業届を提出していない場合は、主な収入源となる職業を記入して提出すれば大丈夫です。
Q.開業届の提出に年齢制限はありますか?
A.開業届を提出して個人事業主になるために年齢制限はありません。
しかし、民法の規定では18歳未満の未成年者が働くためには、親の同意が必要とされています。
【民法第5条】
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
【民法第820条】
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
【民法第823条】
子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
そのため、開業届を提出する際は、親の同意書や戸籍謄本などの提出も併せて必要となります。
Q.古物商許可証は開業届の前に取得しますか?後ですか?
A.古物商許可証の取得と、開業届の提出時期には関係性はありません。
開業届の提出前に古物商許可証を取得しても構いませんし、提出後でも大丈夫です。
しかし、古物商許可がないと中古品を営利目的で販売することはできないので、せどりを開始する前に取得するようにしましょう。
Q.インボイス適格請求書発行事業者に登録する必要はありますか?
A.せどりはBtoBではなく、BtoCのビジネスモデルです。
そのため、インボイス適格請求書発行事業者に登録するメリットはほとんどないので、登録する必要はないでしょう。
最後に
せどりを始めるなら開業届を出した方がいい理由と、適切なタイミング、書き方などについて解説しました。
開業届を出すデメリットはほとんどないので、本格的にせどりに取り組むなら早めに青色申告承認申請書とともに提出した方がいいでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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